ウィリーが瞬間移動を成功させてたから時間の移動もそのうち出来るんじゃないか?
ビッグバンを利用するという考えを捨てて考えた方が近いかもしれない。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のブラウン博士に心酔して「次元転移装置」の開発を考えているなら、やめておいた方が良さそうだ。最新の研究によると、実験室で生成した極小サイズの“ビッグバン”を分析した結果、タイムトラベル(時間旅行)がまったく不可能であることが示されたという。
夢を砕いたのは、アメリカ、メリーランド大学のイゴール・スモリアニノフ氏とハン・ユージュ(洪玉珠)氏。光の曲がり方が通常とは異なる先進素材を使って宇宙誕生をシミュレーションした。
実験の結果、「前進する“時間の矢”を後ろ向きに曲げ、既成事実を元に戻す」という現象は実現不可能と示された。
スモリアニノフ氏は、「タイムトラベルは現実世界で一度も成功していない。今回の新素材により、それが永遠に不可能だと判明した」と語る。
新しいビッグバン・シミュレーション装置は非常に小さく、幅はわずか20マイクロメートル(0.02ミリメートル)しかない。装置を構成する新素材は、金とプラスチックの薄片を交互に組み合わせた人工物質で、いわゆる「メタマテリアル」の一種である。メタマテリアルで光を操れば、“透明マント”の研究や、ブラックホールに閉じこめられた光の再現などさまざまな実験に利用できる。
スモリアニノフ氏は、「研究で用いたメタマテリアルは、約137億年前のビッグバン時代の原始宇宙をモデル化するにあたって、十分妥当な素材だ」と説明する。
メタマテリアルで作られたシミュレーション装置は、独特の光の曲げ方により、理論上の時空間モデル「ミンコフスキー空間」に近づき、3次元の空間に時間の次元を組み合わせた4次元宇宙のモデルとして機能する。メタマテリアルの平面での水平運動はおおむね空間の3次元に相当し、垂直運動は時間経過に応じた動きを示す。
スモリアニノフ氏とハン氏は、緑色レーザービームを使い、メタマテリアル内でビッグバンに似た現象を発生させる実験を行った。レーザー光が金原子に当たると、自由電子の振動によって擬似的な粒子「プラズモン」が生成される。
プラズモンはレーザーがぶつかった点から放射状に外へ広がっていった。これは、「ビッグバン後、ある一点から物質粒子が放射状に広がった」という宇宙科学の想定に適合する。
観察を続けていくと、放射状に広がるプラズモンが外側に移動するにつれて、経路が“ブレて”いくことがわかった。この現象は、「介入がなければ、システムは時間の経過とともに無秩序になる」という「熱力学第二法則」、いわゆる「エントロピー増大の法則」に合致する。
このシミュレーションモデルにおいてタイムトラベルは、「プラズモンが以前に移動した経路とまったく同一の経路に沿って移動し、“輪”を完成させる」現象として表現される。ところが、エントロピーの影響などにより、プラズモンが経路を一度外れると、輪を描くことはもはや不可能だった。
結果として、「宇宙に存在する粒子も時間を逆行できない」という結論が導き出される。
ただし、スモリアニノフ氏は、今回の研究が完璧には程遠いと認めている。「現実世界にどの程度当てはまるのか、現時点では判断できない」。
ほかの研究者からも疑問の声が上がっている。カリフォルニア大学デービス校の宇宙学者アンドレアス・アルブレヒト氏は、「彼らのメタマテリアルは原始宇宙のモデルとして適切とは言えない」と述べる。「ミンコフスキー空間はあくまで理論であり、現実の宇宙を知るためには、ほかにすぐれたモデルや観測データが存在する」。
アリゾナ州立大学の理論物理学者ローレンス・クラウス氏も同様に、「このビッグバンモデルは、現実の宇宙をあまりに単純化しすぎている」と指摘している。
宇宙には未解明の謎が数多く存在しているため、タイムトラベルの夢が消えたわけではない。例えば物理法則は、宇宙での位置によって左右されるのかもしれない。もしエントロピーが減少するという物理法則に反する宇宙に存在したら、映画のストーリーも現実味を帯びてくる。
カリフォルニア大学のアルブレヒト氏は次のように語っている。「エントロピーが常に増大するとは限らない世界も想定できる。“時間の矢”が後進すると考えると、過去や未来に対する概念も全く異なってくる。時間軸が一方通行という常識も通用しないだろう」。
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